ふじっこブログ

日本一周・世界一周経験有の旅行会社社員のブログ

【決定版】訪日旅行市場の成長!インバウンド観光ビジネスの全体像把握(2016年版)

はじめに

国内旅行市場における日本の旅行業界の全体像や主要会社の近年の動向はこちらの記事にまとめています。

当記事では、急成長をし続けているインバウンド観光ビジネスの全体像を掴めるように、セグメント別の訪日市場への取組みや実際の数値をまとめていきます。
市場として大きくなっていることは確かである訪日観光市場ですが、実際にどこにどれだけのお金が落ちて、どういった課題があるのかを解説していきます。

各項目における、主要会社の各社特徴や近年の業績・動向の分析を記した別記事も全項目に用意しております。それぞれの分野ごとにリンクを貼っておりますので、興味ある分野に関しては詳細記事も参照ください。

 

f:id:fuuujikko:20170224005521j:plain

マクロ観点でみる訪日旅行業分析

実際の各事業の詳細分析に入る前にマクロ観点で見ていきます。実際にどれくらいの勢いで訪日外国人数は増えており、市場全体としてどれだけのお金が動いているのか。訪日事業に携わっている人も全体を把握することで実際に今自分がどのように影響を与えているのか客観的に分かりやすくなると思います。

マクロ観点(需要)に関して旅行者の行動・規模などを数値ベースで分析。

まずは肝心の訪日外国人数ですが、もちろん基本的に右肩上がりで、国内旅行同様に震災の2011年のみ減少しています。2015年は過去最大の伸び幅となっており、2016年は10月の地点で前年数値を超えついに2000万人を突破しました。

f:id:fuuujikko:20170223201350p:plain

人泊数に関しても、訪日外国人の大幅増加により全体の人泊数も増加傾向にあり、宿泊施設稼働率は急上昇中。故に各主要エリアでホテル不足が生じています。

f:id:fuuujikko:20170223201409p:plain
また、訪日外国人の国別内訳としては、8割以上がアジアからの訪問となっており、特に中国・韓国・台湾・香港が圧倒的に多いです。次にアメリカ、タイと続く。国別の詳細は下記の国別市場分析で詳しく述べます。
市場としては最も重要となる消費額ですが、人数増加とともに1人あたり支出も増加しており、消費額の増加幅はより大きくなっています。
2015年の訪日外国人による全体消費額は3兆4,771億円(前年比71.5%増)となっており、1人あたり支出は17万6167円となっています。
(一般的に旅行消費額には日本までの移動費は基本的に含まずに計測します。)
日本までの航空券を含んだ訪日旅行による全体支出額の平均は259.828円です。

次に旅行タイプ別に見てみると下記のような比率となり、FITが年々増加傾向にあります。分母がもっとも多い中国で団体ツアー率が高い(42.9%)ので、団体ツアー率が押し上げられています。中国でも規制が緩くなりつつあり個人旅行が増えているので今後FITがより増えていくことは明確で各社FIT狙いの事業に本格参入していっております。

団体ツアーに参加      25.6%
個人旅行向けパッケージ商品 12.3%
個別旅行(FIT)        62.1%

日本訪問1回目の人数が4割で10回目以上のリピーターも1割越で存在します。
中国以外の東アジア諸国(韓国など)は1回目少なくリピーターが過半数います。また基本的に東アジア諸国は平均泊数短めで、逆に欧米は長めです。インドネシア・フィリピン・ベトナムは留学や研修も多く滞在期間データが非常に長く出ます。
訪日外国人の行き先は東京周辺関西北海道沖縄が圧倒的に多く、続いて福岡・愛知の順となります。長野・静岡・広島も訪問率は一定数あります。 

規模別旅行者人数・旅行消費額などの詳細情報はこちらの記事を参照ください。

マクロ観点(供給)に関して国家の方針や取組み、及び法律について

日本国家としても訪日観光事業に本格的に取り組んでおり、JNTOを主体にビジットジャパン事業を進めています。2010年より、“Japan Endless Discovery.”というキャッチコピーも設けて訪日事業に取組んでいます。
観光立国推進基本計画として2012年に策定された5ヶ年計画が更新され、2016年に新たな観光ビジョンが策定されました。

数値としては2020年訪日外国人数を4000万人という新たな目標が掲げられています。2020年は人数も消費額も2015年の2倍を目標としています。また地方部での宿泊数、リピーター数などといった詳細数値も目標の指標に定めています。目標達成に向け定量的な3つの視点も設定されています。現状では、スマホ・GPS・ARなど利用したICTを訪日観光に取入れることが大きな課題となっています。

ただ多く呼ぶだけではなく、日本に来てくれた訪日外国人客の満足度をしっかり上げるために、外国人にとっても過ごしやすい街づくりにも尽力しています。実際に政府が多言語対応や外国人へのサービスに向けた公式ガイドラインも作成しています。

インバウンドに関する法律もいくつかさ策定されていますが、観光立国推進基本法は法的義務というよりは努力目標の提示にとどまっています。地域への訪日観光を促進するための施策も正式に定められていますが、今はまだ同意制での参入です。

最後に、国家をあげてMICE分野の取入れには積極的に動いています。

MICEとは、企業等の会議(Meeting)、企業等の行う報奨・研修旅行(インセンティブ旅行)(Incentive Travel)、国際機関・団体、学会等が行う国際会議(Convention)、展示会・見本市、イベント(Exhibition/Event)の頭文字のことであり、多くの集客交流が見込まれるビジネスイベントなどの総称。

多くのスタートアップが参入しているFIT旅行とはいわば対局のビジネスです。
MICEは団体旅行であり基本的に法人が多く、価が非常に高く、経済波及効果増加のため国家としてMICEに注力。実際にグローバルMICE強化都市を12自治体に定めています。

f:id:fuuujikko:20170224010256j:plain

旅行会社分析

国内旅行市場同様に、通常旅行会社(TTA)とネット専門旅行会社(OTA)に分けて記述を行っていきます。
TTA(Traditional Travel Agent)とは、JTBなどの店舗を持った形態で旅行業を行っている既存旅行会社。OTA(Online Travel Agent)とは楽天やExpediaなどのインターネット上だけで取引を行う旅行会社のことです。
 ※法的に定められるような明確な基準はないです。

訪日旅行市場全体の伸びと比例して旅行会社による取扱高も増加していっています。
大きな特徴としては国内旅行会社の稼ぎ頭であるパッケージツアー利用は極端に少ないです。あくまで日本の旅行会社による売上のケースであり、まだまだ多くの観光客が、自国の旅行会社が企画・主催するパックツアーに参加して来日していますので、その場合は日本の旅行会社に落ちるお金はないということになってしまいます。

通常旅行会社の分析

訪日事業に対して熱心な取組みをしている主要旅行会社をピックアップして分析していきます。また国内旅行市場では一切出てこず、訪日旅行事業のみに特化した旅行会社も多くあります。
まず訪日旅行市場においても最大の売上高を誇るJTBですが、JTBの訪日事業の大半はJTBGMTという会社が担っています。1.3兆円の総合売上の中、訪日部門は533億円です。
JTBの「サンライズツアー」は日本でもっとも古い訪日パッケージツアーであり50周年を迎えました。あとは体験型のエクスペリエンスジャパンの2つが主軸商品です。訪日商品はJAPANICANという名のサイトですべてを販売しておりサイトは英語と中国語版があります。マンガで日本情報を発信するアプリ「Ms.Green」や、訪日用に関西のオフライン店舗など多角展開しています。

国内旅行市場において2番目に大きな売上高を誇るKNT-CTホールディングスも社内で訪日FITセンター を立ち上げるなど訪日旅行事業に本格的に取り組んでいます。TABEE JAPANサイト内で宿泊予約JTOYOKOSOツアーを展開しています。JTOでは2100宿泊施設、1万プランを掲載しており、FIT客の取組みに大きく動いています。国内旅行でも法人や修学旅行など団体に強い日本旅行は、訪日旅行事業においても商品を販売してくれる現地法人への営業に注力しています。2015年にインバウンド事業創造チームも設置しています。

HISは39ヶ国展開のサイト「hisgo」と海外200拠点の複数チャネルを用いて世界各国のFIT客へのマーケティングを行なっています。 ANAとの合弁会社で国内発着ツアーも造成し、中国の会社とも提携しています。

その他に、訪日旅行事業のみに特化した旅行会社の代表格としては「Freeplus」があげられます。インバウンド旅行専門のランドオペレーター(BtoB)で団体旅行の手配が現状の主な収益柱です。宿泊予約や飲食店予約を提供するBtoBや訪日旅行市場に関するリサーチ業も行なっています。一方でツアー販売を行えるCtoC用のプラットフォーム「GUIDEST」も提供しており、訪日観光市場において非常に多岐にわたって活動しています。スピード感がすごいです。現状SEO部が多くの収益を生み出し旅行業への投資に回しているという構図です。

その他2015年10月に設立されたソフトバンクとJTBのインバウンド専用新会社も、アリトリップ内で販売を行い、中国本土をターゲットとしています。旅行後の物販など旅あとにも注力。宗教による食べ物の問題などで対応が難しいムスリムの旅行に特化した訪日旅行会社などもいくつかあります。

訪日事業を取扱う主要会社の詳細分析はこちらを参照ください。

OTA(ネット専門)の解説

国内OTA会社の2大勢力である楽天とじゃらんも本格的に訪日観光ビジネスに本格的に参入しています。
楽天は訪日外国人用にホテルとレンタカーの単体販売を行っておりサイトは10言語対応です。旅行体験を販売するVoyaginを買収したり、各宿泊サイトの外国語ページを作成し訪日用の宿泊プランを作成していくなど訪日業にも力をいれています。地方も含む宿泊施設数の多さが強みで、台湾楽天カードがあることもマーケットにおいての大きな強みとなっています。

一方でじゃらんは現在は宿泊施設販売のみで、サイトは8言語対応です。中国人向け決済サービスAlipayを用いたAirレジを導入したり、他業種である農協と提携して新型ツアーを作成するなど独自の戦略で動いています。
2社を比較すると訪日事業においては楽天の方がより進んでいるといった印象ですね。

観光雑誌マップルなどを運営する地図会社大手の昭文社DiGJAPAN!というブランドで日本の観光情報を発信しています。現在のマネタイズは主に広告ビジネス。DiGJAPANのアプリだけではなくWebサイトも開設。これからは宿泊事業やツアー事業の販売に注力していきます。
高級ホテルに特化した宿泊予約サイトreluxはグローバルプラットフォーム提供で中国・台湾旅行会社サイトでも販売開始。また異分野となる試みで訪日客用にバス・タクシーの手配も可能にしています。

航空券販売(BtoC)とOEM提供(BtoB)が2大柱であるEVOREBLE ASIAも訪日観光業においては目立っています 。AMBITHION社が管理する民泊物件の代行業務なども行っています。

主要OTA企業の訪日事業の取組みにおける詳細分析はこちらを参照ください。 


海外企業OTAの解説

国内旅行会社とは少し異なる観点にはなりますが、大手外資系OTAももちろん訪日外国人客に対してのアプローチを強めています。元々外国人のお客さんを持っているわけなので現状、訪日事業に取組む国内旅行会社よりも大きなマーケットを占めています。

売上高が世界1位のExpediaは訪日旅行にまつわる多くのデータを発表しています。Expedia内でもアジア地域から日本は圧倒的な人気がある。特に東京と大阪の間に位置する東海エリアへの訪日旅行に力を入れようとしています。

一方で収益高が1番であるプライスライングループの収益柱Booking.comでも訪日に注力しており、直前予約向けにもサービスを開始しています。日本国内に5つの営業所も持っています。

知名度抜群の口コミサイト「TripAdvisor 」はANAやぐるなびコンテンツをサイトに掲載するなど日本企業との提携を強化して訪日外国人客により有益なサービスを届けようとしています。日本政府ともタイアップしています。

最後に、訪日旅行市場で無視できない存在がCtripです。中国の個人旅行市場で68%を占める中国最大手の旅行企業であり、 訪日中国人の半数がシートリップを利用しています。

 ・独自基準の華マーク付与。
 ・人間ドック予約サービスも開始。
 ・一休との提携でレストランサービスも開始。
 ・現地サポートを行う「現地サービス部門」を新設。東京で旅行業登録。

 ・SNS微信のグループチャット内でユーザが質問できる「微信隊」作成。

 ・日本郵便と提携し、「サービス名全球購」で日本商品を宿泊ホテルに配送するサービス開始など多くの独自のサービスで 顧客満足度の最大化に取り組んでいます。

その他海外OTA企業&海外大手旅行会社の詳細記述はこちらを参照ください。

旅行比較サイト

続いて多くの人が旅行商品をインターネットで検索した時に最初に見る機会が多い、複数社の旅行商品をまとめて見ることができる比較サイトについて言及します。

知名度トップクラスの比較サイトのトラベルコちゃんは訪日用にHotel Saurusを運営しています。機能は国内版とほぼ同じで海外版の比較サイトです。Ctripとも提携し中国旅行にも参入しています。またやや異なる視点の基、日本在住の外国人もターゲットにした伝統品紹介サイト「GALLERY JAPAN」も運営しています。

沖縄旅行比較に強いTabirai Japanは中国版と英語版のレンタカー予約の比較サイトを持っており、国内大手6社を網羅しています。中国語のフリーペーパーも発行しています。

国内比較サイトを運営する会社では、本来の旅行商品比較といったメイン事業とは異なる分野で訪日業に参入している会社が多いです。Webの会社でより変化が早い部分なので今後の細かい動向もよりチェックしていきたいです。

ツアー・ホテル予約の比較サイトの訪日事業における詳細分析はこちらを参照ください。

運輸業

まず国内旅行においては国内移動における移動手段シェアは新幹線の方が2倍ほど大きいですが、訪日外国人の利用のみに絞ると航空利用の方が多くなります。現状では訪日外国人にとっては飛行機利用の方が一般的とされています。
LCC含む航空会社、新幹線を運営するJR、またレンタカー業界の訪日旅行への取組みや現状を記述していきます。

f:id:fuuujikko:20170224010425j:plain

航空会社(LCC含む)

国内2大勢力の航空会社JALとANAはもちろん訪日外国人の自社利用を増やそうと必死です。
JALは7言語対応の「JAL Guide to Japan」で観光情報発信を行い航空券販売に繋げる戦略を取っています。外国人へのリーチのきっかけとしてweb観光情報を用いています。 訪日外国人用の新運賃の設定も行なっています。毎月1エリアずつフォーカスして特集を組んでいくJAPAN PROJECTでは地域への需要喚起を行っています。
ハード面でも国際線にJAL SKY SUITEを取り入れるなど満足度を向上させるべく励んでいます。JR東日本と協同で作った台湾の会社も運営しています。また長期的な視点を持ち、人材交流、通訳ガイドの育成や環境保全にも本格的に取組んでいきます。

ANAは自社の機内の冊子からスマホのWebサイトへと誘導させる戦略をメインに据えています。さらに自社が持つ複数のサイトや海外カウンターから、旅マエも旅ナカでも情報発信に注力しています。
ANAも外国人特別運賃を設定し、国内線での訪日客取り込みを狙います。

LCCでは、国内旅行市場で頭一つ抜けて成功していると称されるPeachはやはり訪日外国人観光客の取り入れにも成功しております。実際に国際線の半分以上を外国人、特に若年層が占めています。機体のピンクによるかわいい文化や日本のおもてなしなども人気の秘訣です。

一方でジェットスターは訪日客取り込みのため国際線展開も加速させていき、国内移動ではバス会社との提携も行ない飛行機&バスの移動を推し進めています。

国内航空会社やLCC運営会社の訪日事業における詳細分析はこちらを参照ください。

 JRを中心とした鉄道業

1987年にJRは民間化され、エリア別に6つの会社に分かれています。東日本、東海、西日本は純粋民間で上場済。北海道・四国・九州は特殊会社。会社間の資本関係一切など一切なしなので、他エリアの新幹線を販売した場合など、しっかり手数料収益なども発生しています。

最大の売上高を誇るJR東日本は訪日外国人用のチケットを多種販売しており、窓口・駅ビルの改善や予約サイトの改善などオン・オフラインともに外国人用に改善しています。また外国人に対しての情報提供を強化したり、駅でのWi-Fiサービスを整えるなどのサービスも強化しています。シンガポールに訪日拠点となるカフェもオープンさせています。

東海道新幹線を運営し、営業収益は6社で最大のJR東海も外国人専用価格のジャパンレールパスの取扱いはもちろんのこと、管轄内の各エリアの銘品を紹介するサイトも立ち上げて管轄エリアの観光需要喚起にも奮闘しています。

JR西日本も広域周辺観光と受入体制強化に取組み、JR北海道は社内の旅行部門で北海道内の外国人ツアーを作成し周遊型切符の販売を海外の旅行会社を有効活用して行なっています。

JR九州はアジアを中心に九州内周遊チケットや列車/クルーズ販売に注力、JR中四国も北海道同様に周遊パスの企画に力を入れて海外の旅行会社と協業しています。また駅に通訳機能ありのタブレット導入しています。

JR各社、国内移動で新幹線などの鉄道を利用してもらえるように、独自の戦略で励んでいっています。

JR各社についての訪日事業の詳細分析はこちらを参照。

レンタカー市場について

2014年のレンタカー取扱額6350億円のうち、個人向け需要 は2350 億円であり、そのうち訪日外国人利用は80億円(3.5%)です。
訪日外国人が利用するレンタカーは車種大きめで、期間長めの特徴があります。
特に日本と同様に左側運転である香港人により多く利用されており、レンタカー利用は沖縄と北海道で圧倒的に多くなっています。

トヨタレンタカーやニッポンレンタカーなど大手レンタカー会社も各社、多言語版のサイトを設置したり、カウンターでの通訳サービスを儲けるなど、訪日旅行市場に参入していっています。
現状レンタカー大手会社は似たり寄ったりな訪日戦略が多いなか、レンタカー業界において目立つのは新興勢力です。例えば、キテネ はドライブ旅行プランとレンタカーのセット販売を販売などを行なっており、キャンプカーなど含む多様な車種を揃えています。

またTOCOOはインバウンド用の格安レンタカー比較サイト(4言語対応)を運営しており、富裕層相手に配車サービスなども行います。北海道での利用が3割で民泊物件の紹介も予定。TOCOOの本業は有料会員制の格安宿泊予約サイトです。

比較サイトで述べましたが、Tabirai Japanは大手6社すべてを網羅した中国語版・英語版のレンタカーのポータルサイトを運営しており訪日外国人客がレンタカー予約にリーチする際の大きな導線となっています。

各レンタカー会社の特徴や訪日事業についての詳細分析はこちらを参照。

宿泊施設

f:id:fuuujikko:20170223201409p:plain

上記はホテルの重要指標「人泊数」の表ですが、訪日外国人の宿泊者数増加効果で全体の宿泊者数も増加しています。故に宿泊施設の稼働率は急激に上昇しており現状部屋不足は大きな課題となっています。そんな状況なので宿泊施設へのサポートとして訪日外国人用事業に対して国家の補助金も出ています。

人泊数の多い東京大阪北海道京都の上位4つで過半数を占めており、エリアによる偏りが国内旅行よりも多いことも課題の一つです。

また施設タイプ別に見ていくと、訪日外国人宿泊はシティホテルの割合が非常に高いという特徴もあります。通信環境アクセスへのニーズが高く、宿に温泉を求めているという需要も一定数あります。一方で旅館宿泊希望者と比較して実際の旅館宿泊者は少ないので、旅館予約へのリーチは開拓の余地ありです。
最後にビジネスホテルは新規出展が続いてきましたが、2016年に入ってからそろそろ需要縮小も見据えられてきています。ホテル投資は他分野よりもより長い目で見る必要があります。

訪日外国人取込みのため各ホテルの営業努力があり、海外旅行会社への情報の伝え方も工夫されてきています。

宿泊施設市場についての訪日事業における詳細はこちらを参照。

サイトコントローラー

サイトコントローラーとは、複数のエージェント(旅行会社やOTA)に対して、ホテルの在庫や料金設定を一元管理できるオンラインシステムです。

国内最大サイトコントローラーのTL-リンカーンはインバウンドに本格参入しており、3言語対応させたり、韓国の旅行会社との提携を強化しています。

他の主要サイトコントローラーも訪日市場への取組みを始めていますが、中でもイージーサイトコントローラーは元から海外予約サイトに特化しており海外予約サイトのカバー率が非常に高いので、訪日市場において大きな活躍を見せています。

民泊

上述したように訪日外国人の需要が急激に伸びているなか、宿泊施設不足は深刻化しています。今の需要だけに対応して新しく宿泊施設を作りまくれば良いわけでもないので、今すでにある既存の建物を有効活用できる民泊への注目が拡大しています。

民泊の代名詞ともなりつつあるAirbnbの訪日利用客数は年間53万人とされており、市場規模は400億円ほどと言われています。民泊の法律は国家方針により徐々に規制緩和されつつあります。施設や運営スタイル別に適用される旅館業法などは変わってきますが、現状制限なく営業するなら簡易宿泊所がベターです。

民泊の火付け役であるAirbnb自体は2008年位に設立され、時価総額25億ドル、収益ベースで2014年9億ドルと予想されています。 マネタイズはシンプルで予約の手数料です。世界では190カ国34,000以上の都市200万件の物件が販売されています。2014年日本法人も設立され、日本の登録件数も2万軒を越え増加中。実際には民泊解禁地域大田区よりも新宿の方が遥かに多い。

あまり知られていませんが日本企業でも多くが民泊業に参入しています。
例えば時間単位の場所の貸し借りサービスで知られるスペースマーケッットはユニークな宿泊施設に特化した民泊を行なっており、後には日本人向けも視野に入れています。

比較サイトTravel.jpを運営するベンチャーリパブリックは民泊においてもメタサーチを運営しており、各社の民泊商品を比較できるようになりました。

不動産会社ハウスドゥは空部屋を利用した民泊運営を、マンション大手大京は保有マンションではなく新たに戸建の家を買い取り民泊へ参入したり、様々な業種の企業が民泊を開始しています。

京王電鉄が出資する民泊専門の会社百戦錬磨STAYJAPANや農家民宿のとまりーななどユニークな民泊サービスを運営したり、大東建設不動産は民泊の運営サポートに特化した「民泊Gateway」を開始するなど多種多様な盛り上がりを見せている業界です。

民泊市場についての訪日事業における詳細はこちらを参照。

現地アクティビティ

移動や宿泊のみにとどまらず、訪日外国人客による旅先現地での観光消費額も著しく増加してきています。特に「爆買い」が終焉を向かいつつあり、需要が「体験」に移ってきていることはこの分野のさらなる追い風になっています。

日本文化を感じられるものやスキーなどのアクティビティの人気が高いです。またより文化を感じられやすく暖かさを感じる事いうことで、各地域が考案する着地型観光としてニューツーリズムが盛り上がっています。

この分野の主要会社の動きも活発です。
2014年に開設し、2016年よりHISの傘下になったアクティビティジャパンは訪日外国人客用にも圧倒的商品の多さを誇っています。またHISの海外現地拠点と提携して上手くプロモーションをしています。

海外商品が多い現地アクティビティ販売会社として有名なベルトラは、JTBGMTのツアーもサイト上で販売しています。欧米・英語圏を中心にツアーを提供している海外サイトを買収したり、九州の西鉄旅行と協業して九州地区のツアー販売するなど、多くの顧客をすでに持つ他分野会社と提携を進めています。

Expediaなどの大手も日本での現地オプショナルツアーを本格強化しており、サムライ体験など特殊なツアーを多数揃えています。JTBなど20社と提携しています。

現地アクティビティ市場における訪日事業の詳細分析はこちらを参照。

 

観光情報

観光情報分野は、国内旅行市場と訪日旅行市場で活躍している主要会社の顔触れが最も大きく変わります。
日本人向けの観光情報でトップシェアを占めているコンテンツを翻訳したものがそのまま使えるわけではなく、求められているコンテンツ自体がまるっきり異なるということも起因しての現象だと思います。

日本から発信する訪日外国人向け情報で成功している媒体は現状webメディアがメインになります。アクセス数でいうと、訪日情報メディアの老舗JapanGuideとJapanTravel.comが飛び抜けています。

JapanGuideは月間1000万PV超えで英語・繁体字版があります。元はスイス人が個人で作ったもので売却し今はエクスポートジャパン株式会社が代理運用しています。

JapanTravel.comは12言語で50人の地域担当パートナーと、8,000人のライターのネットワークを持つクラウド型メディアです。外国人が非常に多い会社なのでしっかりとリアルな需要をつかんでいます。

SNSの使用方法が上手く若年層を中心に人気が高いMATCHAも急激にアクセス数上昇中です。なかに各言語のスタッフも確保し8言語に対応しています。旅行ガイドブックの老舗「地球の歩き方」が発行する訪日外国人向け無料フリーペーパー『GOOD LUCK TRIP』は東アジアへのリーチが強く人気があり、ついにアプリ版もできました。Voyaginのプラットフォームで情報発信したコンテンツの販売も開始しました。 

訪日観光業における観光情報マーケットについての詳細分析はこちらを参照。

決済

直近の訪日者数を増やすマーケティング観点だけではなく、実際に日本に来てもらってからの利便性を向上させ、満足度を高めることも非常に重要です。
現状、訪日外国人にとって大きなネックとなっているポイントが決済と通信環境です。

日本のカード利用率は15.8%であり、クレジット利用可能店舗数は18%(売上ベースだと60%)とされており、欧米人から少ないと感じてしまい不便さを感じています。ただ実際に諸外国でのカード利用率はさほど変わらないというのが現状です。
重要なことは①各国で普及しているカード決済取り入れ、とクレジットカード使用可能かどうかが一目で分かることなります。

日本は両替所が少ないということ問題の一つですが、民間企業も両替業に参入できるようになっており、官民協同の両替事業も2016年より始まっており今後の改善に期待できます。

決済部分でもう一つの大きな柱はATMですが、各銀行が訪日客取り入れのためATM増加や他言語化などを施し励んでいます。

訪日市場における決済についての詳細分析はこちらを参照。

通信環境

海外旅行において通信環境の利便性の是非は非常に需要なポイントです。
日本では無線LANよりもSIMカードモバイルWiFiルーターの活性化を図る方向性であり、国家からもSIMカード・モバイルWiFiルーター利用促進のため取扱いたい観光関係者を募集しています。

民間企業も多くの施策を行なっています。TRAVEL JAPAN WiFiはWiFIスポットとともに国内企業が発信するクーポンや情報を無料で提供しています。さらにWiFi利用者のGPSから観光客の行動を分析して、より良い観光地作りの需要データとして活かしています。無料登録しただけでWiFi6万点使用可能となり、企業のコード取得で20万点も使用可能になります。※海外在住の人しか利用できないサービスとなっています。

その他多くの民間企業が独自のサービスを含むSIM販売、またはWiFiスポットの開放を行っており、外国人の通信環境における利便性をあげようと試みています。

訪日市場における通信環境についての詳細分析はこちらを参照。

国別の市場分析

訪日外国人の動向や数値データといってもやはり各国ごとによって特徴は大きく変わってきます。数値で分かる定量データ、及び、市場環境・嗜好などの定性部分を訪日外国人数上位15位までの国別に分析していきます。
 ※2015年の訪日観光者数とランキングに基づいています。

訪日市場における国別の詳細分析はこちらを参照。

第15位ベトナム

19万人。
留学や親族訪問が多いので平均滞在時間は非常に長くでます。
消費内容内訳としてはショッピング費用が非常に高く、特に化粧品が人気です。

海外旅行客の20%が訪日旅行者というほど親日国です。近年のビザ緩和や直行便増加も一要因となっているでしょう。現状ではほとんどゴールデンルートにしか行かず、神戸の人気が非常に高いです。

第14位 インドネシア

21万人
研修などが多くインドネシアも平均泊数は長い割に消費額は少ないです。男性×初めてが多く、訪問先は関東圏に偏っています。

国に富裕層が多くないので非イスラム系が多め。文化・歴史への関心が高く、高級品より日用品求める傾向にあります。タイ同様にLINEが人気です。

第13位 フランス

21万人
1回の滞在期間が他の欧米諸国より長めで、移動範囲が基本的に広めです。フランスの国土の広さを考慮すると、日本の都市間長距離移動も街内移動くらいに捉えている可能性もありますね。

日本文化への関心が非常に高く、なかでもマンガの需要は特に高いです。

第12位 カナダ

23万人
ビジネス旅行×1回目の旅行者が多いく、また、一人旅行かつ個別手配が多いです。トランジットのみも一定数存在しています。

日本政府からは都市に住む中華系のカナダ人をターゲットにPR強化もしています。航空会社は大体直行便のエアカナダか安いユナイテッド航空かの2択です。

第11位 イギリス

26万人
ビジネスや知人訪問が多く。ゆえに1回目、男性、個別手配が高いです。
やや長期滞在目でかなり高支出です。

訪れる地域の偏りは強く、関東圏と長野・広島が非高いです。北海道もやや高め。文化への関心はとても強いです。先進国になればなるほど文化への関心が高まっています。

第10位 フィリピン

27万人
本国内で、在日フィリピン人は中国、韓国の次に多いこともあり、知人訪問が多いです。日本情報の収集手段も日本の知人からが4割も占めています。
女性の割合多め。フィリピンの長期休みと桜の時期がかぶっており桜需要は強いです。

政府はマニラとセブの富裕層を主なターゲットに定め、特に若年層に積極的にプロモーションを仕掛けています。

第9位 マレーシア

31万人
エアアジアを筆頭に安めの直行便が多いです、日頃はタイに行く人が多いです。
ムスリム多めなので専用の対応が重要となります。高級品より日常品への需要が高いです。

第8位 シンガポール

31万人
インターネットへの接触が基本的に高いこともあり、自身でホテルや飛行機を手配する個別手配が大半です。支出はやや高めで、カメラやマンガの購入単価hは非常に高いです。

基本的に裕福層が多めで、シンガポール訪日客のなかには中華系が多い。FIT×リピーターが多いためこの層は重要です。直行便も増加してきています。


第7位 オーストラリア

38万人
カップルで行く人が多く、基本的にFITが多いです。
世界4位の多さを誇る日本語学習者の教育旅行も活発です。

休暇が取りやすい国なので長期間の滞在が多いです。
北海道や長野など雪を目当てに行く人が多く、スキーや温泉欲が高いです。口コミ文化も強いです。

第6位 タイ

集団よりも個人旅行を好みます。女性が多いので、タイ国内だと高くなる化粧品を日本で購入していく傾向があります。高級品よりも菓子類などを買いますが、基本的に全体消費額は高いです。
文化系への興味もある程度強く、四季を強く求めています。

大規模な旅行博に行き内容を把握しネットで詳細情報を求めるというのが主流の流れ。日本観光をテーマにした人気TV番組もあります。
LINEの浸透率が非常に高く、国民の50%が使用しています。スマホ普及率自体も非常に高く、自撮り文化もあるので、写真映えをかなり気にします。

f:id:fuuujikko:20170224010609j:plain

第5位 アメリカ

103万人
ビジネス利用・1人・男性が多く、もちろん多くの外資OTA発祥の国であり個別手配が多いです。ビジネスということもあり東京など関東圏率が高いです。基本的にイギリスと似ている傾向にあります。

ショッピング目的は少なく、他の欧米諸国にもれず日本文化への関心が強いです。実際に体験や○○鑑賞などが人気です。
ITリテラシーの高さ故か、旅館は少なく民泊等の安い宿に泊まりやすい傾向にあります。


第4位 香港

152万人
リピーター率・観光目的の訪問が非常に高いです。個人パッケージ旅行率も非常に高く、旅行会社が狙うターゲット層としては最適です。
リピーターが多いので関東訪問率低く、色んなところに行きますが、なかでも沖縄が非常に高いです。家族での旅行が多め。距離が近い割に3日以内の旅行は少なく結構がっつり滞在します。

グルメ・ショッピングへの需要がとにかく高いです。高級品より自分用への買物が多いです。美食家多めで、仲間との食事を非常に大切にする文化で、独自のマナーありで気をつけなければいけません。買物は中国本土の人並みに消費額が高いです。

またそもそも自国アイデンティティも薄いので文化への興味は極端に低く、その分エンタメヘの興味は強いです。レンタカーを非常に好み、香港人向けレンタカー市場は大きい。同じ繁体字なので台湾と香港はセットでマーケティングされることが多いです。


第3位 台湾

368万人
訪日者数は3位ですが総合消費額では韓国を抜き2位です。女性が多く、北海道と沖縄亜特に人気です。
他の特徴はリピーターが多く、団体ツアーも多め、4~6日間が7割を占めます。買物代は非常に少ないですが、化粧品購入だけは割と多めです。

台湾は基本的にビザ不要です。また中国旅行とまとめて中国経由で来る人もいます。食事は非常に重視しており、見栄えよりも量と質が重要でブッフェなどを好みます。訪日客には舌が肥えている人が多めです。テーマパークへの関心も強いです。日本会社が運営する台湾向け有名サイト・ラーチーゴーもあり。国内旅行会社が台湾向けに提供するツアーはやはりテーマパーク付多いです。


第2位 韓国

400万人
物理的近さも相まってリピーター×3日以内が非常に多いです。
ネット社会であり情報収集手段は個人ブログ参照率が非常に高いです。

買物代は低く重要度低めになっています。また文化・体験への関心も低いですが、温泉・マンガへの関心だけは強いです。日本語学習者人数一位という事実からも日本への関心の高さは伺えます。

時期による人数の偏りは少なく、最も安定させたい重要なマーケットです。口コミ社会で原発問題などに対してより過敏な反応を示しました。現地大手EC会社とHISが協同で子会社を作成しています。

第1位 中国

499万人
中国が訪日外国人者数全体の25%を占め、消費額は40%を占めます。
韓国・台湾・香港とは異なり、1回目の人が大半で団体ツアーが多いです。女性が多めで4〜6日間が大半です。

基本的に1人あたり消費額は高く、なかでも買物代が非常に高いです。電化製品・化粧品・薬の買い物が特に人気で、ドラッグストア利用は圧倒的に高いです。メンツを大切にし見栄張りである面があり、土産などを重要にするという性格的特徴も起因しています。

敢えて少し食べ物を残す文化もあります。おもてなしされることを非常に強く望んでおり、自国用に何か用意がされているとかなり喜びます。

15~29歳のミレニアル世代が5割を占めており、リピーター客として抑えたい層です。訪日中国人の半分はCtripを利用しています。

ネット検閲とビザの2点の問題により、中国市場へのマーケティングは諸外国と大きく異なります。中国特有の禁止が多く、SNSや検索エンジンにも独自性が強いです。SNSではミニブログ微博、チャット形式の微信のシェアが大きく、人気のポータルサイトは百度となっています。これら媒体での専用でのマーケットが必須となってきます。

ビザ制限は未だ他国よりは厳しく団体ツアーが多いですが、所得制限の基準が下げられるなどビザ緩和はどんどん進んできています。